制作裏話

 この立山の鳥瞰図を企画し、作業に取りかかってから結局
1年以上が過ぎてしまいました。もちろん毎日作業が出来
る訳でもなく、仕事の合間を利用してのことなのですが、
その原因はいくつかあります。
まず、ビューポイントを設定するのが難しかったです。主
役の山とアプローチである宇奈月温泉、美女平、大町、白
馬村なども画面に入れるための眺望点を見つけることが意
外にも大変でした。

■コンセプト
 偉そうにも景図工房などと称しておりますが、基本的に
はMacでの地道な作業に他なりません。
現在、様々な鳥瞰図作成ソフトが市販されていますがそれ
をクリック、ポンで表示したものとの差別化を図っています。
地表面をリアルなテクスチャにする方法もひとつの答えだ
と思いますが、衛星写真でもない限り、やはり偽物といっ
た感は否めないと考えました。
一方、衛星写真もある季節に撮影されているものなので、
その表現は限定的だと言えないでしょうか。
そこで、地形図を利用している訳ですが、誰もが手軽に入
手できる国土地理院の地形図なので、平面図としての地形
図と照合することができ、そこから新たな発見が生まれる
ことと願っております。
結局は想像力に頼る部分が大きいとも言えますね。

■地形の険しさ
使用した国土地理院の50mメッシュでは平均値としてのな
だらかな地形になってしまいます。そこで結局は手書きの
修正という作業になります。しかし、絵画と違い地図なの
で自由に描けるものでもなく。測量学的な知識も必要とな
りました。

■秘境ゆえに
丹沢の時と比べ、地名の採集に苦労しました。
特に毛勝山から僧ヶ岳一帯と宇奈月温泉の東方の山々は登
山道も整備されておらず、また人の携わった歴史も希薄な
ようで、地理院の地形図ではがら空きな地域となっていま
す。丹沢のときには「日本城郭体系」などを当たれば、山
城と関連して山名も判明したのですが、今回は山城も築け
ない(築く必要のない)地域で、まるで採集できませんで
した。人と関係を持つから地名が生まれるということを感
じました。
ところがそんなとき、絶好な本と出会いました。「『富山
県山名録』橋本 廣・佐伯邦夫 編 桂書房」です。図書
館にも通い、地名辞典も調べたのですが、これに勝るもの
を知りません。ただ残念なのは富山県のみだということで
す。興味のある方はご一読を。

■満足のいくものを
結論として、自分の欲しい物をつくりました。そのため何
度もやり直しています。
大手地図会社にはできない内容(理由は単純明快で採算が
あわない)であると自負しております。

2004年2月 景図工房