シキ160 全景 1位側から
シキ160は昭和30(1955)年に日本車輌で1輌のみ製造された形式で、拙サイトで取り上げた中では最古参の大物車である。
昭和33年のシキ280の脱線事故を機に荷受梁の心皿脱出防止のため死重が課せられたが、昭和36年に枕枠が新製された。このとき車輪径が860mmから800mmに、緩衝器が油圧式に変更されるなどの改造もされている。
平成9(1997)年まで活躍し、現在は三重県いなべ市の貨物鉄道博物館で保存されている。
ロシキ
地域を限定して運用する最高速度65km/h以下の貨車を示すローカルの「ロ」を冠し、車体には黄帯が施されている。
数字の前の▲はJR化後も車籍を継承したしるし。
2020年4月 記
撮影:1994.06.02. 富士川駅
ロシキ▲160と車体に記載された形式標記
シキ160 全景 2位側から
シキ160 全景 3位側から
前後対称の設計であるが、荷受梁の妻面に前位はA、後位にはBの表記がある。
ディテール
NC-2形 3軸ボギー台車(車端側)
シキ160の台車の配置は3-3軸複式ボギー。
車端側の台車枠には連結器および緩衝器が付随している。
連結器の取付部が台車上枠やまくら枠でなくボギーにあることもこの形式の特徴である。
車体に書かれた注記を左から
荷卸し時には
ハンドスコッチを使用し
手フレーキを弛める
注意 反対側に
手ブレーキあり
荷重 130t
自重 39.5t
3軸ボギー(積荷側)
富士電機株式会社(現 日本AEパワーシステムズ)所有
京葉市原駅常備
台枠と板
あくまで私見であるが、カーブ走行時やポイント通過時のレールへの追従はこの「あそび」が機能しているものと思われる。
また、この位置から見ると荷下ろし時の荷受梁が独立できるよう、台車枠に仮置きする脚部が確認できる。
3軸ボギー詳細
軸受は前時代の平軸受である。
平軸受とは軸受が車軸に覆い被さる形で支持し、外側にある軸箱から潤滑油が滲み出すことで、軸受が負う摩擦を除去する構造である。
単純な方法である一方で、潤滑油供給の不具合などが生じると軸焼けが発生し、最悪の場合は走行不能に至ることもある。
この程度の装置でカーブ走行時の車輪の横動に対応出来るのかと疑問が残り、もう少し調べてみることにした。
3軸貨車のトキ900形 (*2)
3軸貨車との比較
かつて我が国にも3軸貨車が存在した。ボギーではなく車体長の中央に荷重を負荷させるための車輪を配置した貨車である。最盛期には全貨車数の5%を占める程だったという。
代表的な車輌であるトキ900形の軸間距離はそれぞれ2750mmであったが、板
シキ160の3軸ボギーは軸間距離1550mmと3軸貨車と比べると半分程しかない。また、3軸貨車の走行に関しては線路側にも制限があり、その規格に対応した線路のみ走行が許可されていたという。
これらを踏まえると、カーブ走行時の横動はそこまで考慮せずとも良いのだろう。むしろレールの分岐器通過時などで上下方向の挙動に対し、荷重を均等に分散させることに重点を置いた機能であると言える。
トラス構造の荷受梁
トラスの各部材は溶接とリベット接合の混合型で、鉄骨構造物の技術過渡期を現した産業遺産といえよう。
構造力学のテキストではトラスの部材接合部はピン接合といって蝶番状に自由に回転できるものとして習うわけだが、トラス構造黎明期以降は写真のようにプレート状の部材で接合されている。 これは三角形の構造である以上、応力が加わっても、各辺の長さが目に見えるほど変異することはなく、可変域の大きなピン部材から変形が許容されたプレートに置き換わったためである。
とは言っても筆者は変な曲げモーメントが生じているような気がして不安になるが、頭の良い人たちが設計し、何十年もの実績がこの答えで正解であると証明しているのだろう。
突放禁止
突放とは連結された機関車から走行時に車輌を切り離す作業を言う。ワムなど普通貨物の編成を組み替える時に、切り離した車輌を惰性で走行させ、ステップに搭乗した作業員がブレーキのみで速度を調整し、目的の貨車と連結を行っていた。さすがに大物車クラスになると突放作業は禁止となるのだろう。
心皿の位置
心皿は枕枠の中央、覗き穴のある位置である。
空車時に荷受梁どうしを連結する部材が置かれている様子が荷受梁の床面に見て取れる。
荷重 130t
自重 39.5t
車籍銘板(覗き穴の左) JR貨物
京葉市原駅常備
京葉市原駅は千葉県市原市にある貨物駅であるが、留置場所はそこから続く引込線で富士電機株式会社の社有地にあった。
貨車車票
貨車車票
- 貨車記号番号:シキ160
- 発駅:京葉市原 発駅コード:4341(02)
- 品名:変圧器 重量:114(t)
- 着駅:船町(豊橋処理)
- 着駅コード:5233
- 5月31日 入 経由 特13号 取卸し
- 荷受入:日本通運(株)
- 記事:-
貨車表示票
特別な注意を要する貨物を積載する貨車には、貨車車票の他、貨車表示票が使用される。
大物車では特殊貨物検査票がこれに当たる。
特殊貨物検査票
- 輸送番号:特第13号
- 積載限界:第1限界内
- 最大高:4,140粍(mm)
- 最大幅:3,000粍
- 最大長:9,400粍
- 貨物下面と軌条面との間隔:150(mm)
- 検査:(平成)6年5月28日
- 新小岩機関区
客貨車区
検査標記
右側から
- 重要部検査(平成)6-9-9(まで) 4-9-9(検査) 日本車輌
- 全般検査 (平成)8年-9月-9日(まで) 4-9-9(検査) 日本車輌
- 交番検査(平成6)8-18(まで) 5-25(検査) 1級ロシキ160 村田派(出)
- B1 全般検査B級 48ヶ月以内、交番検査1級 90日以内
製造銘板
東京
日本車輌
昭和30年
改造
日本車輌
東 昭和36年 京
大規模改造の経歴が銘板から垣間見られる。
EF65 36
EF65 36
このときの牽引車はEF65-36で久々に目にした0番台であった。
JR貨物色に塗装されているとはいえ、47号機までの1次車の姿を留めた車輌であった。1次車の外観上の特徴として、妻面の通風口がスカート上部に設置されていることや尾灯脇の手掛棒が短いことなどが挙げられる。
当時の所属は稲沢機関区から統合、発足したばかりの愛知機関区。
2002(平成14)年3月15日廃車。
ヨ8131
ヨ8131
かつては貨物列車の最後尾に必ず連結されていた車掌車も1986年で原則廃止となり、この撮影当時でも目にする機会は稀で記録するに至った。 ヨ8000形は1974年から79年まで1170輌が製造された車輌で、国鉄最後の車掌車であった。
車体に記載された判読できる文字を以下に記載
- 東シワ(所属略号:新小岩)
- 自重 10.1t
- ▲ ヨ8131(車籍JR継承)
- 換算 1.0
- 形式 ヨ8000
- B1(全般検査B級 交番検査1級)
- 9-2-2x(平成9年2月2x日まで)
4-2-2x(平成4年2月2x日検査済み)
新小岩車(新小岩車両所)
貨車車票
- 貨車記号番号:ヨ8131
- 発駅:村田 発駅コード:4341-01
- 品名: - 重量: -
- 着駅:村田
- 着駅コード:4341-01
- 記事:交検
村田駅は現 千葉貨物駅 1997年(平成9年)3月改称