シキ850 C 全景 4位側より
シキ850は昭和51(1974)年に落し込み式のC梁で誕生し、翌年分割低床式のD梁が追加された1形式1輌の車輌である。
写真の通り、赤茶色の鋼材を含む部分が積荷で、それを左右に渡されたC梁の間に落とし込む形で支持している。 ゆえにこの方法は落とし込み式と呼ばれる。
水平梁は接合部の取り合いを内側と外側の二種類から選択でき、左右の梁の間隔を変えられることもこの車輌の特徴のひとつである。
2020年現在も健在である。
2020年3月 記
撮影:1993.05.17. 富士川駅
シキ 850 C
荷受ばりに取り付けられた形式銘板
シキ850C
荷重 115t
自重 47.1t
積 13.0
空 4.5
シキ850C 全景
シキ850C 全景 3位側から
ディテール
3−3軸複式ボギー 立面図的に
台車の配置は3-3軸複式ボギーで、2組の台車に台車上枠が載り、そこの心皿に荷受梁の軸芯が収まる構造である。
この軸材に荷重及び牽引方向の全応力がかかる。
また、荷受梁上部には、走行時の心皿脱出を防止するためのダンパーが設置されていることもこの形式の特徴である。
NC-7 台車
NC-7台車は軸間距離1300mm x 2 のイコライザー式3軸ボギー。
イコライザー(equalizer)とは文字どおり均衡を意味し、写真では車軸に荷重を均衡して負わせる水平梁を指す。
詳しく観察してみると、中央の車輪は軸箱上部に左右独立したイコライザーが載る構造で、ポイント通過時やカーブ走行時にレールに追従可能であることが見て取れる。
イコライザーの手前にある円筒形の部材は、
3−3軸複式ボギー
シキ610形の3軸ボギーに比べると直線的な設計は近代的な印象がある。メンテナンスも容易になったことと思われる一方で、車軸受けには前時代の平軸受方式が採用されている。
連結器
台枠に収まり目視出来ないが緩衝器はHD-5D型油圧緩衝器である。
荷受梁のピンとヒンジの取合い
日本通運と記載されている水平梁は進行方向に向かって左右の間隔が選択でき、写真では手前の部材の外側にピン廻りの部材が収まっていることから、幅広の仕様で運用していたことが見て取れる。
日本通運株式会社
日本通運が所有する私有貨車で車籍はJR貨物。
積荷は赤茶色の鉄骨が黒い水平梁の上に吊り掛けてあるのが判る。
製造銘板
車 日本車輌 昭和51年
もう一枚の製造銘板には「昭和51年改造」と刻まれていた。
ブレーキ弁
形式 | 荷重 | ハンドル位置 |
C | 30トン以上 | 閉 切 |
30トン未満 | 開 放 | |
D | 閉 切 |
貨車車票と貨車表示票
貨車車票
- 貨車記号番号:シキ850
- 発駅:安善(新芝浦) 発駅コード:4512
- 品名:ランナー 重量:78.0(t)
- 着駅:南松本
- 着駅コード:5141
- 5月16日 - 経由 - 取卸し
- 荷受入: -
- 記事:輸送番特36号 東京電力 新高瀬川発電所
新芝浦が発駅であるため、荷主は東芝だと思われる。
なお、常備駅は同じく川崎市沿岸の工業地帯にある末広町駅である。
特殊貨物検査票
- 輸送番号:特38号 輸送経路 -
- 積載限界:第1限界内
- 最大高:3,790粍(mm)
- 最大幅:3,120粍
- 最大長:7,000粍
- 貨物下面と軌条面との間隔: -
- 検査:(平成)5年5月14日
- 川崎貨車区
客貨車区
ランナー
今回の積荷はランナーである。ランナーとは水力発電所で使用される水車のことで、写真では半円形をしていることが伺える。これと同じ形状をした、もう半分の部材を現場溶接することで円形のランナーが出来上がる。
荷受先の新高瀬川発電所は長野県大町市の高瀬川水系にある高瀬ダムの水を利用した水力発電所で、日本最大(大きさ、重さ)の水車ランナーを使用している(*1)。
一部分とは言え、奇しくも日本最大の水車ランナーを目にすることができたわけである。新高瀬川発電所で使用されているランナーの外径が6,360mmであることから、写真に写る部材と辻褄が合う。
なお、新高瀬川発電所の運用開始が1979年であることから、今回のランナーは交換用に搬入されたものと判断できる。
地形の落差を利用する水力発電では、上下に引き伸ばされる水圧鉄管内の水塊は真空渦を発生させる。 そのため水は常温でも沸騰し、水車は過酷な環境下に曝され続けるため、定期的に交換が必要となるのである。
積荷の保持方法を写真から判断すると、赤茶色の鋼材にランナーの断面をボルトで固定して吊り下げる方法が取られていたと考えられる。
水車ランナー
佐久間ダム電力館に展示されている水車ランナー
シキ850 C 図面
シキ850 C 回送
撮影:1991年12月 根府川駅