image image

東京電力 嵐発電所

 

嵐(あらし)発電所は大正9年8月に富士紡績により建設されました。当初は田ノ入調整池を利用した調整池式発電でしたが、三保ダムの建設に伴い水没することとなったため、その後、田ノ入発電所の下流から導水路を通した流れ込み式となりました。
構内に変電施設が見当たらないのですが、1号鉄塔までは地中で結ばれています。

 

出力:5700kW 
有効落差:83.83m 
使用最大水量8.35m3/sec

 

 

銘版

東京電力株式会社 嵐発電所の銘版

東名高速道路酒匂川橋の直下の水圧鉄管

 

対岸からのパノラマ(クリックで拡大)

嵐発電所の頭上を渡る東名酒匂川橋は竣工からしばらくの間は東洋一の高さを誇っていました。橋脚の耐震実験のため上部にロケットエンジンを固定し、安全を計ったといいます。
阪神淡路大震災以降、橋脚の周囲には補強材が巻かれ、トラスとの接合部も落橋対策が施されました。そのため、無骨な印象を受けることは否めません。

赤く濁った川に緑色の水が湧きだす様子

水面下に放水口の存在を伺える現象です。

下流側にある滝

おそらく発電所直上の水槽のオーバーフローの水はここへ流れ込むと思われます。

嵐発電所遠景

田ノ倉発電所で使用された発電用水は河内川へ戻されることなく、そのまま左岸の山中を貫き、嵐発電所直上へ現れます。水槽から通じる水圧鉄管は途中で2本に分岐し発電所の建物へ導かれる様子が見て取れます。これは2基の発電機を運用するための構造と思われます。

嵐発電所で利用した水の行方ですが、発電所直下はアーチ橋である道路が横断し、その奥は発電施設の躯体が見えるのみで、放水口は見当たりません。筆者はこれまで、用水は酒匂川に戻されることなく、300m下流の取水口付近まで地中を導水管が通り合流しているのかもしれないと考えていましたが、先日、放水口がある証拠を見つけました。
2010年の台風9号は小山町に甚大な被害を与え、復旧工事の掘削作業と相まって鮎沢川は赤く濁っていました。一方で河内川の水は緑色を呈しています。先述の通り、嵐発電所は田ノ倉発電所の水を使用しています。またその田野倉発電所は丹沢湖から直接導水しているため、嵐発電所の用水は河内川水系と言えます。
嵐発電所から数十m下流に赤く濁った酒匂川の脇から、河内川と同じ緑色をした水が湧き出しているのを目撃したことで、放水口の存在を確証しました。